トマトはかつて「毒リンゴ」と呼ばれ、危険視されていました。理由は血筋にあります。トマトが属するナス科には、本物の毒草——ベラドンナやマンドレイクが名を連ねているんです。16世紀、南米からヨーロッパに持ち込まれたトマトは、その親戚づきあいのせいで長く警戒されました。1597年、イギリスの本草学者ジョン・ジェラードは著書で「腐った臭い」とまで書いています。イタリアなどでは食用ではなく、しばらく観賞用として庭を彩りました。
この毒性を説明する話として、近年よく語られるのが「食器」説です。裕福な人々が使っていた鉛を含むピューター食器に、酸性のトマトが触れて鉛が溶け出し、中毒を起こした——というものです。もっともらしく聞こえますが、トマト史の研究者アンドリュー・スミスの調査によれば、当時トマトの危険性に触れた文献はごくわずかで、しかもその著者たち自身は「恐れていない」と書いていたそうです。専門家はこの食器説に懐疑的です。
裁判所前の実演は、なかった
もうひとつ有名なのが、1820年、ニュージャージー州セーラムでロバート・ギボン・ジョンソンという人物が、裁判所の前で群衆を前にトマトを食べて見せ、無毒だと証明した、という話です。ところが当時の記録は一切残っていません。この逸話の初出は1937年、郷土史家の著書。以後1940年、1946年、そして1949年のラジオ番組と、語られるたびに脚色が加わっていったことが確認できます。史実というより、20世紀に育っていった伝説と見るのが妥当です。
実のところ、トマトの実そのものに毒はありません。毒があるのは葉や茎、まだ青い未熟な実に含まれる成分のほうです。それでも学名には、その古い恐れの痕跡が残っています。1753年にリンネが名付けた学名は、直訳すると「食べられる狼の桃」。ナス科の植物が、人を狼男に変える薬に使われるというドイツの民間伝承に由来する名前です。毒どころか、人を怪物に変えると思われていたわけですね。
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参考にした情報源: en.wikipedia.org


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