貴族の「生きた食料庫」スコットランドの奇妙な鳩小屋

文化

16世紀、スコットランドでは、ある鳥の飼育が貴族の権力と富の象徴でした。それは「鳩」です。1つの鳩小屋には最大500羽もの鳩が飼われ、その経済的価値は現代の貨幣価値で高額な価値があったといいます。

エディンバラ郊外に残るコリスターフィン・ドーヴコットは、そんな時代の名残をとどめるユニークな建造物です。円筒形の石造りの建物の中には、蜂の巣のように無数の巣箱が並んでいます。この鳩小屋は、かつてコリスターフィン城の一部でしたが、城は破壊されても、この鳩小屋だけは奇跡的にその姿を留めてきました。

そもそも、なぜ貴族は鳩をこれほどまでに大切にしたのでしょうか。当時のスコットランドでは、食料事情は決して豊かではありませんでした。特に冬場は、食料が乏しくなりがちです。そんな中、鳩は年間を通して卵を産み、繁殖力も高いため、「生きた食料庫」として重宝されたのです。さらに、鳩の糞は質の高い肥料となり、農作物の生産性を高めるためにも利用されました。

この鳩小屋の建設は、単に鳥を飼うためではありませんでした。それは、領主の富と権威を示すための建築であり、当時の土地所有制度や食料生産システムを色濃く反映したものでした。鳩の独占飼育権は貴族だけの特権であり、他人の鳩小屋から鳩を盗む「鳩泥棒」は、重罪として厳しく罰せられたといいます。それほどまでに、鳩は経済的価値を持つ「家畜」とみなされていたのです。

コリスターフィン・ドーヴコットの内部に足を踏み入れると、石壁に苔がこびりつき、静寂に包まれています。かつては数百羽の鳩の羽音や鳴き声で満ち溢れていたであろう空間を想像すると、長い年月を感じずにはいられません。この堅牢な石造りの構造は、夏は涼しく、冬は比較的暖かい、鳥類にとって快適な環境を提供していたのでしょう。

現代の私たちから見れば、鳩小屋が富の象徴であったり、食料源として重宝されたりというのは、少し奇妙に聞こえるかもしれません。でも、当時のスコットランドの社会背景を考えると、これは非常に合理的で、賢明なシステムだったと言えるのではないでしょうか。失われた城の唯一の遺構として、この鳩小屋は、かつての貴族たちの暮らしぶりを今に伝えています。


【関連動画をYouTubeでチェック】

最新の映像や解説動画がアップロードされています。

▶️ 「スコットランド 鳩小屋 歴史」の関連動画一覧 (YouTubeサイトへ移動します)


関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました