シマウマの縞がハエを避ける「仕組み」は、提唱者自身が覆した

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シマウマの縞模様には、こんな説明を聞いたことがあるかもしれません。「あの縞は、アブなどの吸血昆虫を避けるためにある。白黒の縞が光の偏り方を乱し、虫の目をくらませているんだ」と。これは2012年の研究から広まった、よくできた説明です。でも2023年、この説を最初に有力視した研究チーム自身が、自分たちの手でこの説明を覆しました。

出発点は、2014年にネイチャー・コミュニケーションズ誌に載った、カリフォルニア大学デービス校のティム・カロ氏らによる研究です。シマウマの仲間やウマ、ロバなど複数の種・亜種を比較し、縞の特徴(本数・濃さ・分布)と、捕食者の分布、気候、アブなどの被害、社会的な要因との相関を、系統関係を考慮したうえで同時に検証しました。結果、複数の縞の指標がアブの被害と強く結びつく一方、カモフラージュ説・体温調節説・社会的認知説には一貫した裏付けが見つからなかったんです。「なぜシマウマだけ縞があるのか」の答えとして、吸血昆虫忌避説が最有力に躍り出た瞬間でした。

「偏光を乱す」説は、2023年に覆された

では、縞はどうやってアブを遠ざけるのか。2012年に広まった説明はこうです。アブは水面などで反射する水平偏光を頼りに獲物や水場を探しており、黒い体表は強く偏光した光を反射する一方、白い部分はほとんど偏光しない。縞模様はこの偏光信号を乱し、アブにとって魅力的な「的」に見えなくする、という理屈です。模型を使った実験でも、黒い馬型に562匹、白い馬型に22匹のアブが集まったのに対し、縞模様の馬型にはわずか8匹しか来なかったと報告されています。

ところが2020年、市松模様の模型でも縞模様と同程度にアブが減ることが確認され、「平行な縞」特有の仕組みだったはずの説明に疑問符がつきます。そして2023年、2014年論文の筆頭著者だったカロ氏本人を含むチームが、偏光そのものを再検証しました。結果は「支持する証拠なし」。代わりに最も強い効果を示したのは、単純な明暗のコントラストでした。灰色一色の毛皮は、市松模様の毛皮に比べて13倍もアブが着地しやすかったそうです。細い縞は、大きな単色の面ができるのを防ぎ、コントラストを保つ役割を果たしている、というのが現在の作業仮説です。

体温調節説も、実は死んでいない

ちなみに、カロ氏らが退けたはずの体温調節説にも、その後2015年に別の研究チームから反論が出ています。プレーンズシマウマだけに絞ってアフリカ16地点を比較したところ、縞の変異を最もよく説明したのは気温だった、という結果です。双方の研究チームは、その後も論文上でやり取りを続けており、決着はついていません。

2025年に発表された、これまでで最も包括的なレビュー論文は、「単一の仮説だけでは縞模様の変異全体を説明できない」とまとめています。吸血昆虫忌避説は現時点でもっとも支持されている説明ですが、それで全部が説明できるわけではない。提唱者自身が自説の一部を書き換えるくらい、この縞模様の謎は、まだ研究の途中にあるようです。


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参考にした情報源: nature.com

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