1911年、4カ国が署名した「北太平洋毛皮アザラシ条約」は、単なる漁業規制ではありませんでした。それは、海の哺乳類を守ることを目的とした、史上初の国際条約でした。(野生生物を守る国際協定としては1902年の鳥類保護条約などが先にありますが、海の哺乳類を対象に実効性を持った条約としては、これが最初とされています。)
この条約は、毛皮として、またその油が灯油や工業用として重宝され、乱獲の限りを尽くされていた北太平洋の毛皮アザラシを守るために生まれました。19世紀から20世紀初頭にかけて、アザラシの毛皮は高級品であり、その脂肪は食用油や照明用灯油、さらには馬具の保革油としても利用されていました。
条約が締結される前、アザラシの個体数は激減し、絶滅の危機に瀕していたとされています。しかし、この条約により、公海での商業的捕獲が30度以北の海域で禁止され、アザラシたちは息を吹き返す機会を得たのです。幸いなことに、この条約は単なる規制にとどまらず、伝統的な方法で食料や住居のためにアザラシを狩猟する先住民には例外が設けられていました。アリュート族やアイヌ民族といった人々は、その生活様式を維持することができたのです。
この歴史的な条約の締結は、現代の国際的な環境保護活動の礎とも言えるでしょう。後の海洋哺乳類保護法(1972年)など、野生生物を守る国際・国内の法整備に、先例を残したのです。かつては生活必需品や工業原料として大規模に利用されていたアザラシですが、現在ではその利用は限定的となり、倫理的な議論も続いています。1911年7月7日にワシントンで署名されたこの条約は、経済活動と自然保護という、時代を超えたテーマに人類が初めて国際的に向き合った証なのです。
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参考にした情報源: en.wikipedia.org


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