新しく知った言葉や物事に限って、その直後からやたらと目にするようになる――そんな経験はないでしょうか。英語圏では、この現象に「バーダー・マインホフ現象」という、いささか物騒な名前がついています。1970年代の西ドイツの過激派組織の名前です。
由来をたどると、1994年10月16日、アメリカ・ミネソタ州の新聞セントポール・パイオニア・プレスの日曜読者投稿欄に行き着きます。投稿者は「Gigetto on Lincoln」というペンネーム。友人とバーダー・マインホフ・グループの話をした翌日、その友人から電話があり、その日の新聞に同じ組織の記事が載っていると知らされた、というエピソードから、この名前を思いついたそうです。実はこのペンネーム、自分が飼っていたウィートン・テリア「アインシュタイン」の愛称「ジジェット」にちなんだもの。投稿者本人は後年、「辞書に載せようなんて考えてもいなかった。友達を笑わせたかっただけだ」と振り返っています。
学術的な名前は、まったく別にある
この現象、言語学・心理学の世界ではまた違う名前で呼ばれています。スタンフォード大学の言語学者アーノルド・ツヴィッキー氏が2005年8月、自身のブログで提唱した「frequency illusion(頻度錯覚)」です。一度気づいたことは目立って見えてしまう「選択的注意」と、その後の出来事を自分の仮説の裏付けとして拾い上げてしまう「確証バイアス」。この二つの、すでによく知られた心理バイアスの組み合わせとして説明されています。
辞書とウィキペディアで、「正式」が食い違っている
2019年3月、オックスフォード英語辞典(OED)がこの語を正式に収録しました。ところが面白いことに、OEDは「バーダー・マインホフ現象」の項目のほうを主見出しとして扱い、「frequency illusionとも呼ばれる」と説明しています。一方、英語版ウィキペディアは逆に「Frequency illusion」を記事本体の見出しにし、「バーダー・マインホフ現象」を俗称としてそちらへのリダイレクトにしています。どちらが「正式な呼び方」かは、参照する先によって答えが変わってしまうわけです。ちなみに、この現象そのものを直接調べた査読付き研究は見当たらず、あくまで既存の心理バイアスの組み合わせとして説明されている、というのが正確なところのようです。
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参考にした情報源: languagelog.ldc.upenn.edu


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