テトリスと聞けば、あの曲が頭で鳴り出す人は多いはずです。ゲームボーイ版の「A-TYPE」。あれはもともと、ロシアの民謡です。正式には『コロベイニキ』——意味は「行商人たち」。日本では、行商人が首から下げる箱を指す「コロブチカ」の名で親しまれてきました。
元をたどると1861年、詩人ニコライ・ネクラーソフが発表した長い詩に行き着きます。歌になったのは冒頭の24行だけ。中身は、布や小間物を売り歩く男と村の娘の話です。しかも値段の駆け引きが、そのまま口説き文句になっている。娘は慎重に値切って、最後にトルコ石の指輪だけを受け取ります。ブロックを積む手つきで聴いていたあの曲は、恋の駆け引きの歌だったわけですね。ちなみに元の詩のほうは、行商人が帰り道で襲われて命を落とすという、かなり暗い結末を迎えます。
なぜロシア民謡だったのか
ゲームボーイ版で編曲したのは、任天堂の作曲家・田中宏和さん。3曲のうちB-TYPEは彼のオリジナル、C-TYPEはバッハのメヌエットです。なぜロシア民謡を選んだのか、本人がのちに答えています。テトリスの原作者はロシア人で、自分が遊んだ先行版のBGMもロシア民謡が元だった。だから自然な流れだったし、原典の雰囲気を大切にしたかった、と。
面白いのはその先です。彼が選んだ旋律の形——高い音から始めて下へ跳ぶ歌い出しは、テトリス以前のロシアの資料にはほとんど見当たらないそうです。ところがゲームが世界を席巻したあと、ロシアでもその歌い出しが広まっていきました。原典を敬うつもりで作った編曲が、150年続いた民謡の歌い方のほうを塗り替えてしまったわけです。
おまけをひとつ。日本で最初に出荷された約2万5000本には、あの曲が入っていません。初期版のA-TYPEは、田中さんのオリジナル曲でした。
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参考にした情報源: en.wikipedia.org


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