パソコンが固まったときに押す、Ctrl+Alt+Delete。あの3本指の組み合わせは、世界標準になる予定などまったくない、開発者の時短ハックとして生まれました。
作ったのはIBMのエンジニア、デビッド・ブラッドリーさん。1980年に始まったIBM PCの開発プロジェクトで、当初12人のチームの一人としてBIOSを担当していました。当時、開発中のマシンはバグで固まるたびに電源を切って入れ直す必要があり、そのたびに時間のかかるメモリテストが走ります。本人いわく「日によっては、問題を探して5分ごとに再起動していた」。そこで、メモリテストを飛ばして再起動する開発者用のショートカットを作ったわけです。
かかった時間は、本人の言葉で「5分か10分の作業で、あとは山積みの100個のタスクの次へ移った」。キーの選び方には理由がありました。誤って押されては困るので、CtrlとAltから物理的に遠く離れたDeleteを選んだのです。初代IBM PCのキーボードでは、この3つを片手で押すことは物理的にできませんでした。当初はCtrl+Alt+Escだったものの、3つとも左側にあって左手だけで押せてしまうため変更した、と本人は後年語っています。
「発明したのは私ですが、有名にしたのはビルです」
ブラッドリーさん本人は、これを社外に出すつもりがありませんでした。「元々は今で言うイースターエッグのつもりだった。開発中に私たちが使うだけで、外に出ることはないはずだった」。ところが状況が変わります。「ソフトウェア出版社たちがこれを見つけた。自分のプログラムの起動方法をユーザーにどう説明するか悩んでいた彼らに、答えができたわけです。『ディスケットを入れてCtrl+Alt+Deleteを押せば、魔法のようにプログラムが起動します』と」。
2001年8月、IBM PC生誕20周年のパネルディスカッションが開かれました。ビル・ゲイツさんら業界の大物が並ぶ中、最初の質問はゲイツさんではなくブラッドリーさんに向けられます。彼はこう答えました。「手柄は分け合わないと。発明したのは私かもしれませんが、有名にしたのはビルだと思います」。会場は大笑いになりましたが、報道によれば、ゲイツさんは笑わなかったそうです。この場面の映像は今も残っています。
12年後、ゲイツ氏が返した言葉
話には続きがあります。2013年9月、ハーバード大学のイベントで「なぜPCを立ち上げるのに指が3本必要なのか」と問われたゲイツさんは、偽のログイン画面対策だと説明したうえで、こう答えました。「単一のボタンにもできたはずだが、IBMのキーボード設計担当者が我々にボタンをくれなかった。あれはミスだった」。会場は爆笑したそうです。ただしこの「IBMのせい」という説明には、技術史の側から反論が出ています。WindowsNTの設計は1980年のIBMのキーボード設計とは無関係であること、そして本当にミスだと思っていたなら、自社でキーボードを作った際に直せたはずだ、といった指摘です。
最後にひとつ、あまり知られていない皮肉を。Windowsのログイン画面でこのキーを押させる理由は、セキュリティです。偽物のログイン画面にパスワードを盗まれないよう、「どのアプリにも横取りされていないキー」が必要でした。ところが有力な組み合わせはどれも既存のソフトが使用済み。唯一空いていたのがCtrl+Alt+Deleteだったのですが、その理由がふるっています。押すとマシンが再起動してしまうので、まともなアプリは誰も使っていなかったから。破壊のキーだったからこそ、信頼のキーに選ばれたわけです。
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参考にした情報源: cnn.com


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