「わざと打ちにくくした」説は、崩れている

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キーボードのQWERTY配列。「速く打つとタイプライターの活字棒が絡まるので、わざと打ちにくい並びにして速度を落とした」——この説明を聞いたことはありませんか。じつは近年の研究で、かなり分が悪くなっています。

調べたのは京都大学の安岡孝一さんたちです。2011年の論文で、この通説をはっきり否定しました。根拠のひとつが数字です。英語で最も多い2文字の組み合わせ「th」は、たしかに活字棒の並びで正反対の位置にあります。ところが2番目に多い「er」は、わずか16度しか離れていない。隣り合っているんです。「よく使う組を離した」という説明では、この不揃いが説明できません。

最初の客は、電信技師だった

もうひとつ効いているのが、初期の顧客です。1868年、最初のタイプライターが送られた先は、シカゴの電信学校でした。モールス信号を受け取って文字に起こす人たちです。受信は送信側の速さに合わせるしかありません。わざと遅くする機械を、彼らが買うでしょうか。

ただ、ここから先は慎重に書きます。「では何が配列を決めたのか」は、まだ決着していません。安岡さんはモールス符号の紛らわしさに合わせて並んだと推論していますが、これは当時の証言ではなく逆算です。タイプライター史の研究者からは「証拠がない」という批判もあります。崩れたのは通説のほうであって、代わりの答えが確定したわけではないんですね。

ちなみに、いまと同じ並びが確定したのは1882年。MをNの隣へ移し、CとXを入れ替えた最後の一手でした。その動機は、打ちやすさでも機械の都合でもなく、他社の特許を避けるためだったと言われています。


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参考にした情報源: repository.kulib.kyoto-u.ac.jp

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