タコの腕は、切り離されても3時間モノを掴み続ける

生き物・自然

タコには、腕にも「頭脳」があるのかもしれません。タコが持つ神経細胞は、全部でおよそ5億個。そのうち3分の2にあたる3億5000万個ほどは、中央の脳ではなく、8本の腕に分布しています。エルサレム・ヘブライ大学のビニヤミン・ホックナー氏らの研究グループが、長年にわたって明らかにしてきた事実です。

切り離された腕は、まだ動く

この分布の意味は、実験で裏付けられています。1963年の研究では、切り離されたタコの腕の吸盤が、切断後最大およそ3時間にわたって、触れたものを掴む反射を示しました。2001年の学術誌サイエンス掲載の研究はさらに踏み込み、脳との神経接続を外科的に切断した腕でも、刺激を与えると、通常の到達運動とほとんど同じ動き方――付け根から先端へ「曲げ」が伝わっていくパターン――が引き起こされることを確認しています。つまり、動きの基本プログラムそのものが、脳ではなく腕自身の神経回路に組み込まれているわけです。

それでも「腕に意思がある」は、言い過ぎだった

ただし、「切り離された腕には独自の意思がある」というのは、さすがに言い過ぎです。2021年の研究では、タコに痛み刺激(酢酸の注射)を与えたとき、その情報が腕から脳へつながる神経を通って、きちんと中央の脳まで届き、処理されていることが電気生理学的に確認されています。傷を舐めたり隠れたりする行動も見られ、麻酔薬でその行動が消えることも分かりました。掴む・避けるといった反射は腕だけで完結しても、痛みを感じて判断するのは、あくまで脳の仕事のようです。研究者たちはこの関係を、脳が大まかな方向性だけを指示し、実行の細部は腕自身に任せている、指揮者と現場担当のようなものだと説明しています。

ちなみに2023年には、タコの神経細胞が、水温の変化に応じてわずか1日足らずでRNAを書き換え、神経に関わるタンパク質の設計図そのものを調整していることも分かりました。腕が勝手に動くだけでなく、神経の中身まで環境に合わせて素早く作り替えている――タコの神経系は、思っている以上に忙しいようです。


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参考にした情報源: science.org

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