ギネスの泡が沈んで見えるのは、錯覚ではない

科学

黒ビールのギネスをグラスに注ぐと、白い泡の粒が下に向かって流れていくように見えます。おかしな話です。泡は本来、浮くもの。目の錯覚だろう、と思われがちですが、これは本物の物理現象です。

2013年、アイルランドのリムリック大学の研究チームが論文にまとめました。仕組みはこうです。グラスの真ん中では、泡は素直に上へ昇っていきます。ところがパイントグラス特有の、下すぼまりの形のせいで、壁際には泡の少ない領域ができる。泡が少ないと、液体を押し上げる力も弱い。すると真ん中で上がった液体が、壁際で下に戻ってくる循環が生まれるんです。

泡より速い、下向きの水流

壁際のこの下向きの流れは、泡自身が浮こうとする速さより勝っています。だから泡は、浮力に逆らって連れ戻され、沈んでいくように見える。エスカレーターに例えるなら、真ん中に上りのエスカレーター、両脇に下りのエスカレーターが同時に動いているようなものです。

この研究チーム、グラスを逆さの形——下に向かって広がる形——でも同じ計算をしています。結果、循環は起きず、泡はただ上るだけでした。あの幻想的な渦は、中身のビールではなく、グラスの形が作っていたわけですね。

ギネスならではの事情もあります。使われている気泡は、普通のビールの二酸化炭素ではなく窒素です。溶けにくい気体なので、泡が小さくなる。小さい泡ほど浮く力が弱く、この下向きの流れに巻き込まれやすいんです。ちなみに研究では、泡の直径を122マイクロメートルから90マイクロメートルに小さくすると、ビールが落ち着くまでの時間が43秒から83秒に延びる、という結果も出ています。小さな泡ほど、長く踊り続けるということですね。


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参考にした情報源: arxiv.org

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