いま手元で動かしているマウス。その原型は、木を削った小さな箱でした。ボタンは1つだけ。底には、直角に組んだ薄い金属の車輪が2つ。1964年ごろ、スタンフォード研究所のダグラス・エンゲルバートさんの構想を、同僚のビル・イングリッシュさんが形にしたものです。
名前の由来は、後ろから出たコードが尻尾に見えたから。ただし誰が言い出したのかは、本人も覚えていないそうです。「研究室のみんながそう呼んでいた」。ちなみに最初の試作品、コードは前から生えていました。手首の下を通って邪魔だったので、後ろに回したんですね。
90分で、未来をまとめて見せた
この箱が世に出たのが、1968年12月9日。サンフランシスコの学会で、エンゲルバートさんは約90分のデモを行いました。操作していたコンピュータは、48km離れた研究所にあります。そこで実演されたのは、マウスだけではありません。文字をクリックすると別の文書へ飛ぶ仕組み、画面の中に窓を並べること、離れた同僚の顔を映しながらの画面共有、そして同じ文書を2人で同時に編集すること。いま私たちが毎日やっていることが、1台のシステムの中で、まとめて動いていました。
ただ、お金の話は少し切ないんです。マウスの特許を持っていたのは本人ではなく、雇い主の研究所でした。しかもその特許は1987年に期限切れになります。パソコンにマウスが当たり前について回るのは、その後の話。エンゲルバートさんが受け取ったロイヤリティは、ゼロでした。研究所がアップルに出したライセンス料について、彼は後年こう語っています。「4万ドルくらいだったらしい」。
おまけにその特許、正式名称は「ディスプレイ・システム用XY位置指示器」。本文に「マウス」という言葉は、一度も出てきません。
関連記事
参考にした情報源: en.wikipedia.org


コメント