駅やデパートの「エスカレーター」。あれ、もともとは商標でした。1900年に登録された、れっきとした商品名です。パリ万博に出品され、一等賞まで取っています。ところが50年後、その権利はきれいに消えてしまいました。しかも、とどめを刺したのは他社ではなく自分たちの広告だったんです。
1950年、競合会社の申し立てを受けて、アメリカの特許商標庁は登録の取り消しを認めます。理由は明快でした。この言葉は一般の人々にとって、もはや「特定の会社の製品名」ではなく「動く階段そのものの名前」になっている、と。
証拠は、自社の広告だった
決め手になった証拠が皮肉です。エスカレーターを持っていたオーチス社は、自社の広告や、自社が取得した特許の文書の中で、この言葉をふつうの名詞のように使っていました。中には「わが社の商標の意味」と題した広告まであったといいます。商標の値打ちを説く広告が、その商標にはもう値打ちがないことの証明になってしまったわけですね。
こういう現象を、法律の世界では「普通名称化」と呼びます。売れすぎて名前が世の中に溶けてしまい、独占できなくなる。アスピリンやセロファン、ヨーヨーも同じ道をたどりました(ただし国によっては今も有効な商標です)。
だから企業は必死に守ります。コピー機のゼロックスが出した広告が見事でした。いわく——「アスピリンのように使われると、頭が痛くなる」。すでに名前を失った先輩を引き合いに、自分はそうならないと宣言したわけです。
ちなみに日本の法律は少し違って、普通名称のように使われても登録自体は残り、他人に権利を主張できなくなるという形をとります。ウォシュレット(TOTO)もエレクトーン(ヤマハ)も宅急便(ヤマト運輸)も、今なお現役の登録商標。一般名称はそれぞれ、温水洗浄便座、電子オルガン、宅配便です。
参考にした情報源: en.wikipedia.org


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