あくびが伝染するのは「共感の証」ではないかもしれない

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「あくびは、脳が酸欠になっているサイン」——よく聞く説明ですが、これは実験で否定されています。通常の100倍を超える濃度の二酸化炭素を吸わせても、逆に純酸素を吸わせても、あくびの頻度はまったく変わらなかったという実験結果があるんです。呼吸に関わる単純な生理反応というより、あくびにはもっと別の仕組みが働いていそうです。

そして、あくびが「他人にうつる」現象も、実はまだ科学的に決着していません。長年有力とされてきたのは「共感の証」説です。2007年の研究では、自閉スペクトラム症の子どもはあくび動画を見ても伝染しにくいことが分かり、これが「他者の感情を読み取る力の弱さ」の表れだと解釈されました。2010年の追試でも同じ傾向が確認されています。

「共感説」は、その後どんどん怪しくなっている

ところが、その後の研究でこの説明は複雑になっていきます。実は最初の研究を行った本人が2013年、視線の動きを測る装置を使って再検証したところ、自閉スペクトラム症の子どもがあくびに反応しにくいのは、共感の欠如というより、単に相手の顔をじっと見ている時間が短いからではないか、という新しい解釈にたどり着きました。2014年には328人を対象にした大規模研究で、共感の高さは年齢を考慮すると伝染しやすさの有意な予測因子ではなくなり、個人差の9割以上は今も説明できないままだと報告されています。犬を対象にした実験でも、2013年には「飼い主のあくびの方が伝染しやすい」という共感説を支持する結果が出ましたが、2020年に複数の研究を統計的に再解析したところ、親密さによる偏りは見られませんでした。

もう一つの説は、「脳を冷やすため」

もう一つの有力な仮説は、あくびが脳を冷やす機能を持つのではないか、というものです。実験では、額に冷たいパックを当てながらあくび動画を見た場合、伝染率はわずか9%まで下がりましたが、温かいパックでは41%、常温のパックでは45%と大きな差が出ました。屋外の通行人にあくびの写真を見せた別の実験でも、平均気温22度の冬は45.0%が伝染したのに対し、体温に近い平均37度の夏は23.8%にとどまっています。2017年の系統的レビューは、共感説について「エビデンスは一貫しておらず、結論が出ていない」とまとめています。あくびがなぜうつるのか、答えはまだ出ていないようです。


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参考にした情報源: americanscientist.org

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