先生は「ウイルス」ではなく泥棒を疑った

テクノロジー

1982年、アメリカの高校の数学教師が、自分のフロッピーディスクの異変に気づきます。覚えのない詩が画面に出たのです。教師が疑ったのは、コンピュータの病気ではありませんでした。生徒が職員室に忍び込み、ディスクを勝手に書き換えたに違いない——そう考えて、その生徒を問い詰めたそうです。

犯人はリッチ・スクレンタさん。当時9年生、日本でいう中学3年にあたる歳でした。彼が冬休みに自宅のApple IIで書いたのが、のちに「Elk Cloner」と呼ばれるものです。パソコンの世界で、研究室の外へ広まった最初のウイルスとされています。

渡さずに配る方法

動機がふるっています。彼は友達とソフトを貸し借りするとき、ディスクにいたずらのメッセージを仕込むのが好きでした。ところが皆に警戒され、誰もディスクを貸してくれなくなってしまう。そこで彼は考えます。自分がディスクに触らずに、勝手に移っていく方法はないか、と。

当時のパソコンにはハードディスクがありません。電源を入れると、フロッピーの中に入っているOSごと読み込んで動きます。彼のプログラムはそこに紛れ込み、ディスクを抜かれたあともメモリに居座って、次に挿された別のディスクへ乗り移りました。ネットワークなどない時代です。運び屋は、ディスクを持ち歩く人間そのものでした。

ちなみに例の詩は「50回目の起動で表示された」とよく書かれますが、正確には少し違います。50回目の起動で仕掛けが仕込まれ、利用者がリセットを押した瞬間に現れる、という仕組みでした。

本人はこれを英雄譚にしていません。「くだらないいたずらだった」「自分が書いた中で一番おバカなプログラムが、一番の話題になった」。破壊が目的ではなかったものの、規格の違うディスクを壊してしまう副作用も実際に出ています。軽い気持ちの悪ふざけが、手を離れて歩き出した最初の記録なのかもしれません。


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参考にした情報源: en.wikipedia.org

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