アポロ月面離陸の映像に、エンジン音が無いのはなぜ

歴史・文化

アポロ11号が月を離れる、あの有名な離陸映像。よく見ると、ロケットが噴いて機体がぐんと持ち上がるのに、エンジンの轟音がまったく入っていません。地球のロケット打ち上げなら腹に響くあの爆音が、月では聞こえない。なぜでしょう。

答えの半分は、月が真空だということにあります。音は空気の振動として伝わるので、空気のない月面では、エンジンの音は機体の”外”へは広がりません。そして映像を撮っていたカメラは、着陸船の外、つまり真空の中に置かれていました。だから、空気を伝わってくるはずのエンジン音を、そもそも録りようがなかったのです。

では、あの映像で聞こえる声や雑音は何かというと、これは無線です。宇宙飛行士の声や管制との交信が、電波に乗って届いたもの。マイクがその場の空気で拾った音ではありません。エンジンが噴いていても、映像にのるのは通信の音だけ、というわけです。

ただしこれは、「月では誰にも音が聞こえなかった」という話ではありません。着陸船の中は、宇宙飛行士が呼吸できるよう空気で満たされた”与圧された部屋”でした(純酸素を約0.3気圧ほど)。だから船内のアームストロングとオルドリンには、エンジンの音や振動が、空気と機体を通じてちゃんと届いていました。実際、彼らは下降時のエンジンを「うなるような響き」、足元の振動を「大きな車輪が回るよう」と表現しています。

面白いのは、肝心の離陸そのものを、乗組員が「とても滑らかで、とても静かな乗り心地だった」と振り返っていること。轟音とともに飛び立つ地球のロケットとは、まるで逆の感想です。映像に音が無いのは、何かが”消えた”からではありません。音の伝わらない真空と、電波で届いた声だけが記録に残るしくみ——その二つが重なっただけ。静かの海からの、文字どおり静かな旅立ちでした。


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参考にした情報源: en.wikipedia.org

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