「成功そのものが、企業を創業者の目的から引き離す『金融の重力』となる。」
これは、『Lean Startup』の著者エリック・リース氏が新著『Incorruptible』で説く、企業の「腐敗」を招くメカニズムです。企業は成長するほど、本来の理想から逸れてしまうというのです。
リース氏は、企業が「腐敗」する原因は、個々の悪徳な人物ではなく、組織の構造的な欠陥にあると指摘します。所有権、インセンティブ、説明責任といったシステムが、意図せずとも行動を変化させてしまうのだとか。
では、どうすればこの「金融の重力」に抗えるのでしょうか。リース氏は、株主第一主義に依存する現代の企業統治を見直し、「ガバナンス・フォートレス(統治の要塞)」を構築することを提唱しています。これは、創業時の目的を守るための構造的な防御策と言えるでしょう。
コスコやパタゴニア、ノボノルディスクといった企業は、この「金融の重力」に長年抵抗し、数十年にわたり繁栄してきた成功例として挙げられています。彼らは、創業時の目的を守るための、巧みな構造的防御策を講じているのかもしれません。
最近では、AIの進化が、企業の構造的な弱点をさらに露呈させる可能性も指摘されています。AIは効率化を加速させる一方で、既存の構造的な問題が、その能力によってさらに悪化するリスクもあるとのこと。
リース氏が『Lean Startup』の発売から15年を経て、企業の「魂」を守る方法論に焦点を移したのは、多くの企業が「腐敗」していく様子を目の当たりにしてきたからでしょう。新著『Incorruptible』は、2026年5月26日に発売されました。

「利益」という言葉も、単なる財務的リターンではなく、「人間的な繁栄の最大化」と捉え直すべきだとリース氏は語ります。現代経済で利益とされることの多くは、実際には構造的な腐敗の一形態である、というのが彼の鋭い指摘です。
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